恋愛セミナー81【手習】第五十三帖 <手習-2 てならい> あらすじ蘇生してしまったことを嘆き、それから浮舟は一切ものを口にしなくなってしまいます。 美しい浮舟が亡き娘の生まれ変わりと思い、懸命に看病を続ける尼君。 ようやく体が持ちなおした浮舟ですが、「尼にして欲しい。」と頼みます。 尼君は止め、僧都は五戒を受けさせました。 尼君は娘が亡くなったのを悲しみ、世を捨てて小野に住んでいたのですが、思いがけず美しい浮舟を 手に入れたのを喜んでいます。 時折、尼君が弾く琴の音を聞いても、東国で育ち、音楽など身につけずにいたと悲しくなる浮舟。 「身を投げた涙の川の早い流れをいったい誰がとどめたのだろう。」 こんな歌を浮舟は悲しく書きつけています。 「母はどんなに惑っているだろう。乳母も右近もどうしているだろうか。」 浮舟が生きていることを知られたくない様子なので、尼君は何も聞かず、誰にも話さないようにしています。 ある日、尼君の亡くなった娘の婿・中将が、小野にやってきました。 しっとりと落ちついた様子で話す中将を見て、尼君の女房たちは浮舟と結婚して昔のようになれば、と言い合います。 とんでもないことと思い、色恋沙汰などときっぱり縁を切りたいと願う浮舟。 尼達の中には珍しい長い髪を垣間見て、浮舟に興味を持つ中将。 少将の尼と呼ばれる女房に詳しいことを聞こうとしますが、何もわからないままに庵をあとにしました。 尼君も美しい浮舟の顔を見ながら、中将が通ってくれたらと思っています。 中将は横川の出家している弟・禅師の君のもとに泊まりました。 尼君の庵で髪の美しい女人を見たと話す中将。 禅師の君は、浮舟が見つけられたときのことを話し、中将は気の毒に思います。 帰り道に中将は小野に立ち寄り、浮舟に心を寄せていることを尼君に話しました。 「あだし野の風になびかないで女郎花(おみなえし)。道が遠くとも私があなたを守ろう。」 中将の歌に、返歌するよう浮舟にうながす尼君。 「移し植えられ思い乱れている女郎花。この浮き世から逃れた寂れた庵に。」 まったく応えようとしない浮舟に代わって、尼君が返します。 中将は、初めての文なのでしかたがないと納得して帰るのでした。 恋愛セミナー81 1 中将と浮舟 尼のなかにいても ひたすら尼になりたいと願う浮舟。 いったん死んだ身が生き返り、浮世にもどることを厭うなら、とるべき道は出家。 浮舟の考えはもっともなことです。 面白いのは、自分たちが出家していながら、浮舟を止める尼君たち。 止めるどころか、尼の住む庵に、元娘婿を通わせようとさえしています。 どうやら、尼といってもいろいろなタイプがいるよう。 清少納言の書いた「枕草子」には、遊女と変わらないことをして暮らしている尼も出てきます。 ハムレットの「尼寺へ行け。」というセリフは「娼婦になれ。」という意味でもありますが、 尼寺が娼館に近い場合が、日本にもあった模様。 僧達のいる寺も、欲望の舞台であるケースがありますね。 高徳の僧を兄に持っている尼君も、まわりの女房たちも、まだまだ浮世に未練たっぷり。 宇治十帖を書いていた時の紫式部は、すでに出家していたようですが、 尼とは名ばかりの、こんな女性たちが周囲にたくさんいたのでしょう。 僧や尼のいる場所は聖の顔をした俗の最たるものと言えるのかもしれません。 ジャンル別一覧
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